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第8章 奇妙な、物の怪

「いったいどうして？」








幸久は、体を擦り寄せ動いている










家庭教師の今中昧華似の瀧野潤子を、









抱きしめながら




涙を流した。









「痛いよ…幸久、もっと優しく抱きしめて…」








病院の廊下から、




寒々しい冷気の漂うが、







瀧野潤子の身体は温かみがあった。





家庭教師の今中昧華さんへは恋愛感情は






ないつもりでいたが、
黒石幸久が、心から



面会時間を取りたかったのは、









自分の身体を身を呈して守ってくれた、
陸上部員の瀧野潤子だと、





抱きしめながら確信した。








「私よ…アナタの瀧野潤子さん、よ！」






整形手術を確かにしたような面持ち。






ガガッ、ギィ、ガラッ、





突然、ドアが開いた。







幸久の目には家庭教師の





今中昧華が、
もう１人映る。









「ハハハハハッ、



幸久クン、
課外授業を始めるわ～！」









厭な声音と動物園へ初めて来たときの、






獣臭が匂い立った。








瀧野潤子だと思い込み、愛おしく抱きしめているが、










幸久の胸板にすがりついているのは、








今中昧華似の女性だから…と幸久は混乱していく…。










妖獣化していく






かつての女性達から、
幸久は逃れるすべを探したが…。