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偽装結婚~代理花嫁の恋~
第1章 ★ 突然の辞職勧告 ★
その時、何気なく前方に向けていた彼女の視線が小さな建物を捉えた。会社からほど近い小さな喫茶店は、浩二と二度だけ訪れたことがある。一度目はお茶だけ、二度めは雰囲気も味も良かったからとランチをしに。
煉瓦の壁に蔦の絡まる瀟洒な外装は、ちょっと見にはアンデルセン辺りの童話にでも出てきそうなノスタルジックな感じである。真正面には可愛らしい鈴が取り付けられていて、客が扉を押す度にチリチリと愛らしい澄んだ音を立てるのだ。