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可愛いヒモの育て方。
第9章 夢
何度か呼びかけてみるけれど、やはり無言。イタズラ電話だろうか。
薄気味悪く感じ、切ろうか迷っていた時だった。
「……麻人は……、君島麻人は、そちらにいますか?」
「え……?」
女性の声だった。唐突に挙がった名前が意外すぎて、とっさに応対できなかった。
麻人の、知り合い?
「えっと……」
いますかというのは、バイトとしてうちの店に在籍してるかということだろうか。それとも、今店にいるかってこと?
とりあえず名前を聞こうと思い当たり、営業用の声は崩さぬまま、相手の質問はスルーし、こちらから尋ねた。
「あの、お名前を伺ってよろしいですか?」
「…………」
沈黙。唐突に、通話がぷつりと途切れた。
「え、切られた……?」
ツー、ツーと無機質な機械音を聞きながら、唖然となった。
なんだ? 今の電話。
私は受話器を戻し、早足に店長室まで行った。ノックして、ドアを開ける。
「失礼します」
「どした?」
机に向かっていた店長が、顔を上げる。
「なんか今、妙な電話がきて……」
「妙な電話? クレームか?」