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かわいい狼くん
第17章 思わぬ出来事
その夜、俺はウキウキしながら
部屋で荷物をまとめていた。
〈コンコン…〉
「彰斗、ちょっといいか?」
「どうしたの?圭吾さん」
大事な話がある。
圭吾さんはそう言って部屋のベッドに腰掛けた
「心の事なんだがな…」
「うん?」
「あの子には…幼い頃の記憶がない。」
え?
「記憶が…ない?」
「記憶喪失ってやつだな。
前に言ったと思うが、
心の母親は交通事故で亡くなった。
…その時、心も一緒に居たんだよ。」
俺は黙って圭吾さんの話を聞いた
「母親の死を目の前で見ていた心は
そのまま意識を失ったらしい。
そして病院で3日経ちようやく目を覚ました。
だが…事故については何も覚えていなかったんだ。
俺の事は幸いわかってくれたが…
大好きな母親の顔でさえも思い出せなかった……」
そんな……
だからあの日、俺達のことも…?
「記憶って…戻るの…?」
俺は静かに聞いた
「わからない。
何度も写真を見せたり母親の話をしたんだ…
でも思い出そうとすると
心の体が拒絶反応を起こす。
だから俺は母親を含め過去を
思い出させようとするのをやめたんだ」
「そう…なんだ……」
あの時も心は急に頭が痛いと倒れこんだ…
あれもそのためだったのか…
「わかったよ圭吾さん。
過去については触れないように気を付けるよ」
「ありがとう。
彰斗、心を頼むな。」
肩を力強くつかまれ
圭吾さんが心を想う気持ちが充分に伝わった
今、心が幸せならそれでいい
またあの笑顔が消えてしまうのなら
心が苦しまずに済むなら…
俺のことなんて忘れたままでいい
また側にいられる。
俺はそれで充分だ……