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出会いは必然に
第6章 全ては必然に
「そのままだよ」

私が聞いた話をざっと大川さんにすると
大川さんは否定もせずうなづいた。

「俺の仕事の依頼書をもらってきてるんだろ?見せて」

私の隣の部屋のコギタナイ男はいつの間にか仕事をする顔になっていた。

パラパラと依頼書をめくり
いくつかの確認事項をゆっくりと読み

「予想以上に良い条件だな。やるよ」

と言った。

「今日、ブローチを私に付けてくれたのは偶然じゃないのね?」
「必然だよ。陽菜に聞いていた会社が俺と接触したがっていたのは知ってる」
「あのブローチを先方が気づかなかったら?」
「仕事はしない。広告代理店の人間ならだれでも気づく。
あの賞はそれだけの権威がある。もし、気づかないならその程度の会社だ」
「・・・・・」

「一昨日亡くなった人。俺をこの業界で育ててくれた人なんだ。
また、仕事をしろって最後に言われた」

「なんで、休業してたの?」
「裏切られたんだよ。俺のデザインを1番信頼してたヤツに持って行かれた。
俺が甘かったんだな。それで仕事の何もかもがいやになった」

「また仕事を始めるなら、陽菜の手助けになればいいと思った」
「・・・・・」

「何も言わずにごめん」

綺麗に頭を下げたこの人に、これ以上何も言える言葉なんかなくて。

大川さんが、ぽつりぽつりと話しだした言葉を静かに聞いていた。




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