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~散花~
第29章 入内
「本当に申し訳ございません、第一夫人さまをこのような狭苦しい御寮にご案内することになってしまいまして…」
青白い顔の女官が平身低頭する。
玉蘭はあわてて手を振った。
「頭をあげてください。わたしはこの部屋、気に入りました」
“御寮”と呼ばれた室内を改めて見回す。
調度品が揃った10帖ほどの居室。とばりの奥は8帖の寝所になっており、寝心地の良さそうな寝台が据えられている。
松風殿に似たしつらえに、玉蘭は懐かしさと安心感を覚えた。
(少なくとも鶯燕館の落窪に比べたら、どんなところも天国だわ)
何より、南に面した広縁から射し込む陽光の穏やかさが嬉しい。
その広縁から、今、大勢の女たちが入れかわり立ちかわり玉蘭の部屋を覗きこんでいた。