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~散花~
第34章 余韻
つかの間の休息。
玉蘭はひとりで南殿楼閣の最上階にいた。
ぼんやりと景色を眺める。
眼下では、建前上は玉蘭の御付き内侍となった加蓮が、井戸の水を汲んでいるところだった。
加蓮は実に有能で、後宮内での折衝や客あしらいから、玉蘭の食事の配膳、着替えの手伝い、手水の世話、果ては今のように水汲みや雑仕女がやるようなお半下仕事まで文句も言わず、実に手際よくこなしていた。
おかげで無遠慮な売り込み女官は皆無となり、そもそも南殿に出入りする人間が激減した。
できれば、もう少し気安くお喋り相手にでもなってくれれば言うことなしなのだが…。
さすが本業は秀瑛の隠密。
余計な雑談にはほとんど乗ってこなかった。