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~散花~
第44章 傷心と浄化
「そ…そちらは、いったいどなた様ですか?」
「え…っと…あのね、加蓮。こちらは范玲利さま。わたし付きの…典侍を務めていただこうと思うの」
「――!」
びくっ、と眉間を震わせ、加蓮はつかつかと歩み寄るなり、茶碗を載せた折敷を置きもせず、玉蘭に耳打ちした。
「無闇に御殿へ他人を入れぬようにとの西の御方のご命令、お忘れですか。まして御付きの典侍など…許されるはずございませぬ」
「わかってます!」
玉蘭もひそひそと言い返す。
「でも、しゅう…西の御方には折りを見てわたしから直接ご説明しますから、どうか今は穏便に…」
「そういうわけには参りません。この件はただちにご報告申し上げます!」
「加蓮…」
それはそうだ。
加蓮の真の主人は秀瑛なのだから。
ぷりぷりと怒りを露わにしている加蓮と、がっくり肩を落とす玉蘭。
そんな二人を、玲利は静かに見比べている。
そのとき、
「……うっ…」
玉蘭は不意のめまいに襲われた。