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~散花~
第48章 散花
『いま時分、西湖はさぞや水風が涼しいのでございましょうね』
『羨ましゅうございますわ』
『まこと、わたくしも行啓に御供いたしとうございました』
『わたくしたちが物見遊山で内廷から出るには、行幸や行啓に御供つかまつるほか手はありませんものね』
『もっと皇后さまに付け届けをしておけばよかったわ』
『まぁ…そのように下世話なことを仰って』
行列の最後尾が門の向こうへ消えたのを見届けると、側妃や女官は好き勝手に世間話を始めた。
確かに、今回の行啓の名目は、都から五日ほど離れた避暑地への漫遊である。
しかし実のところ、
にわかに心の病を篤くした第七夫人が皇后に伏して願い出、同じく気鬱に悩まされていた皇后が帝へ直訴したすえ実現した、無期限の療養行路であることを知る者はほとんどいない。