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~散花~
第49章 終章
「ん~~…」
腕の中で、幼子が目を覚ました。
ふわぁ…と可愛らしいあくびを漏らす。
はっきりとした目鼻立ちで、「お父君に似て、さぞや麗しい貴公子におなりあそばしますでしょう」と皆が口を揃える。
しかし、配下の臣を堂々と眺め下ろすつぶらな瞳は、「やっぱり、あの人に似てるわね」と玲利に言わしめるほどでもある。
“あの人”は、かねてから宣言していた通り、玉蘭が皇子を産むと白虎殿を引き払い、都大路に構えた自分の屋敷へ帰って行った。
今日の立太子礼にも参列していない。
(べつにいいわ。わたしには、この子がいるもの)
玉蘭は、愛しい我が子の額に口づけを落とした。
そして、我が子を誉め称える眼下の人々の斉唱にいつまでも、いつまでも耳を傾けていた。
東宮の真実の父が誰なのか、
それは――
玉蘭にもわからない。
完