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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
 次の五の日が来るまで、小紅はじりじりと身を灼かれるような焦燥感に苛まれた。
 その夜、小紅はひたすら、そのときが来るのを寝床の中で待ち続けた。到底眠れる心境ではなく、また眠ってしまって機を逃しては一大事である。といっても、今夜に限って灯りをつけていては、栄佐に怪しまれる危険性がある。薄闇の中で息を殺しながら薄い衾にくるまっていた時、かすかに物音がした。
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