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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第15章 第一部第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い
 龍馬が子ども好きだというのは納得できる。更に彼が宿の一室でこの子に自ら三味線を奏でて歌ったり故郷の話を話して聞かせたりする姿も容易に想像ができた。いかにも龍馬らしい逸話だ。
 ゆえに、小さな結び文が龍馬からのものだとすぐに判り、小紅は開くのももどかしく読んだ。
―明日昼八ツ(午後二時)、随明寺門前の茶屋にてお待ち申し候。         龍馬
 飄々とした雰囲気には似合わない几帳面な字で短く用件が記されていた。
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