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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜
「小紅はまだすべてを失って日が浅いんだぞ? お前はよくそんなことが言えるな」
武平が口に押し込まれていた布を取ってくれたため、漸く小紅は喋れるようになった。
「叔父さま、どうか気を鎮めて下さい。お願いですから」
小紅は武平に懸命に言った。準平が殴られるのは構いはしないけれど、これ以上気を立てては、武平の身体に障ると思ったのだ。心ノ臓には癇を立てるのがいちばん良くないというではないか。