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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜
 武平はしばらく胸を押さえてその場に立ち尽くしていたが、やがて、小紅を安心させるかのように優しい笑みを浮かべた。
「さあ、あんな馬鹿は放っておいて、私たちは先に行こう」
 準平は実の父親が眼の前で明らかに体調に異変を感じているというのに、知らん顔だ。まるで動揺している気配もない。憎々しげにこちらを睨(ね)めつけていた。
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