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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第16章 【戀月桜~つきこいざくら~】決着~安政六年四月五日宗徳寺 
「ほら、お前の髪にもこれがついてた」
 示して見せたのは、やはり桜の花びらだった。
「これ、やっぱり受け取ってくれねえか?」
 栄佐が懐から後生大切に取り出したのは、あの赤珊瑚風の簪だった。
「いつかもっと稼げるようになったら、それこそ本物の珊瑚の簪だって買ってやるからさ。それまでは、これで我慢してくんな」
 栄佐がそっと簪を髪に挿してくれる。
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