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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第16章 【戀月桜~つきこいざくら~】決着~安政六年四月五日宗徳寺 
 栄佐の温かな腕が小紅の身体を回り、焦らすような手つきで黒髪を絡め取る。それだけで小紅はいたたまれないくらい胸が騒ぐのだ。
 背中に栄佐の手が当てられ、彼はふっと笑った。
「心臓の鼓動が速くなっているな。それに、顔も紅い。この困った顔はなかなか良い、そそられるぞ。もっと困らせてみたくなる」
 耳許で甘い声で囁かれ、そっと額に落とされたのは軽くて熱い口づけ(キス)。
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