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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  
 その夜は小紅の十七年の生涯で最も長かった。何度も湯を沸かし、おきみの吐き下したもので汚れている身体を綺麗に拭き清め、寒くないように布団を長屋中から借りてきて、その身体を温めた。
 もどかしいことに、小紅のできることといったら、それくらいしかなかった。それに引き替え、栄佐は懸命に手を尽くしていた。処方を考え抜いた薬湯を匙でおきみに少しずつ呑ませ、何度も脈を取る。脈がいよいよ弱くなったときには得意の針を様子を見ながら慎重に打った。
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