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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  
 ただ、栄佐が苦痛を和らげるための針を打ってしばらくの間だけは、おきみは呼吸も楽になり、眠っているようだった。意識は最後まで朦朧として定かではなかったけれど、時々、熱に浮かされて智助の名を呼んでいた。
「俺は無力だ。人ひとりの生命も救えない」
 栄佐が呟くのに、小紅はすかさず言った。
「栄佐さんは十分頑張ったわよ」
「気休めを言うな」
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