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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第21章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 兄の悩み
―おきみさん、智助ちゃんを守ってくれて、ありがとう。
小紅は天に向かって静かに語りかけた。
淡い藍を溶き流したような江戸の空が東の端だけ、ほんのりと紅(くれない)に染まっている。それが刻一刻と少しずつ色を深めて、やがて空全体が朱(あけ)の色に染め上げられてゆくのを眺めるのは、何とも爽快な心持ちだった。
二人は何も言わずに、ただ黙って色をうつろわせてゆく夜明けの空を眺めていた。言葉にせずとも、互いに心に通い合うものはちゃんと感じ取れた。
小紅は天に向かって静かに語りかけた。
淡い藍を溶き流したような江戸の空が東の端だけ、ほんのりと紅(くれない)に染まっている。それが刻一刻と少しずつ色を深めて、やがて空全体が朱(あけ)の色に染め上げられてゆくのを眺めるのは、何とも爽快な心持ちだった。
二人は何も言わずに、ただ黙って色をうつろわせてゆく夜明けの空を眺めていた。言葉にせずとも、互いに心に通い合うものはちゃんと感じ取れた。