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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆
「い、いえ、その、私は」
 彼は哀れにも蛇に睨まれた蛙のようにすくみ上がっている。その時、栄佐は初めて男の貌を見た。確かに背は高くないが、その面は存外に整っている。眼許辺りは気のせいか、どこかで見たような気もするのは不思議だった。
「実は俺はこの隣に住まいしているんだ。なので、この家の住人とも顔見知りだから、お前が用があるというのなら託(ことづ)かってやっても良い」
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