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第23章 第二部・第五話　【冬柿】　冬柿

「あの女？」
「そうそう、時折、あんたの針治療を受けにくる、えらい色っぽい中年増。確か美桜(みお)っていったけ」
　深川の料亭〝緋扇〟の女将美桜は栄佐の患者の一人だ。おしかの言うように妖艶な女で、小紅もこの長屋に来た最初の日はいきなり美桜と栄佐の仲を勘違いしたこともあった。
　おしかの亭主錠吉は時折、栄佐の元に来る美桜と出くわし、美桜を見ると魂を抜かれたように惚(ほう)けて見とれている。女房のおしかとしては、それがはなはだ面白くないのだ。