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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿
 小紅が自らの心に漸くひとすじの光を見出そうとしたその瞬間、栄佐と眼が合った。彼は男らしい笑みを浮かべ、大きく頷いて見せた。その時、小紅は確かに栄佐のひと言に救われたのだ。
 栄佐は小紅が泣き止むまでずっと待っていてくれた。漸く泣き声が止むと、彼はいつものようにくしゃっと小紅の髪をかき回す。
「私ったら、恥ずかしい。子どものように泣いたりして」
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