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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘
 父と娘

 長屋のどぶ板を踏み鳴らして木戸口まで出た栄佐は歯がみした。
「畜生」
 仁助の小柄な姿はもうどこにも見当たらなかった。あれだけ憔悴しきった身で一体、どこに行ったのか。しかも、今は霜月も半ばに差し掛かり、日中でもそろそろ冷える初冬である。
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