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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘
 仁助はそのときだけ腹立たしげに言い、また悄然とうつむいた。
「私が馬鹿でした。いや、馬鹿なんていうもんじゃない。大阿呆です。女の色香に惑い、まんまと甘い言葉に乗せられ、娘や先代から預かった上州屋と老舗の暖簾まで潰した。おまけに、自分のこしらえた多くの借金を年端のゆかない娘に背負わせようとしたんです。冷酷な人非人(ひんぴにん)だと罵られても仕方ない」
「訊きにくいことを訊きますが、この三年もの間、どこで何をしていたんです?」
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