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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘
「毎度ご贔屓に、ありがとうございます」
 張りのある声が響いた。小柄ながら、背筋はしゃんと伸びており、白髪交じりの髪は月代もきちんと剃り、結っている。もちろん無精髭もない。
 職人風の客は小紅たちとすれ違って反対方向へと消えていった。入れ違いに今度はお店(たな)の隠居らしい老人が杖を突いて現れ、続いて幼子の手を引いた女房らしい中年女が来た。
 栄佐が嬉しげに声を弾ませる。
「商売繁盛のようで何よりじゃねえか」
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