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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪
「何もそこまでしなくても良いのに」
 と、小紅が笑うと、栄佐は大真面目な顔で言うのだった。
「これは俺なりのけじめさ。こんなことでもしなけりゃ、また鬼畜と化してお前の寝込みを襲いそうだしな」
 彼に言わせれば、二人の間に立てた屏風が心の枷ということらしい。
 ある夜、栄佐は傍らに眠る小紅の存在を必要以上に意識してしまい、当然ながら、眠れなくなった。普段は意識などしたことのない火の用心の掛け声がやけに耳につく。
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