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第26章 第二部･第六話【春咲く花】　略奪

　一度は白昼堂々と小紅を口説いている小間物屋の若旦那が栄佐に見つかり、店から叩き出された（とはいっても、別に言葉どおり本当に暴力沙汰になったわけではない。栄佐が冷たい眼でひと睨みしただけで、若旦那は怖じ気づいて這々の体で出ていった）。
　そんなわけで、栄佐の機嫌は良くなかった。小紅に下心を持っていない客でも、小紅が自分ではない他の男に微笑みかけているのが許せないのである。そんなところはまるで気に入った玩具を独り占めしたがる子どものようだ。