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第28章 第二部･第六話【春咲く花】　春咲く花

　笈馬は若い頃から角倉家でも変わり者として異端視されていたらしい。十五になるかならずで江戸を出奔、一人はるばる長崎まで遊学し、そこで正式に和蘭陀(オランダ)医術を学んできた。二十歳の時、また江戸に戻り、その頃、腕利きの町医者として活躍していた碓井章典(しようてん)に弟子入りし、章典の診療所を手伝う傍ら、医術の研鑽にも励んだ。
　その間、章典の一人娘町子と恋仲になり、その三年後、町子と結婚し正式に碓井家に入ったという経緯がある。