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第28章 第二部･第六話【春咲く花】　春咲く花

　可憐な花嫁が纏うのは白無垢である。花嫁衣装は純白の中に暁の薔薇をほんのひとはけ混ぜたような、真珠光沢の練り絹に銀の刺繍で鶴丸が織り出された逸品だ。
　この日のために、江戸でも随一と呼ばれる呉服太物問屋京屋が職人たちを総動員して仕立て上げた花嫁衣装である。金屏風の前に居並んだ新郎新婦はまさに夫婦雛（めおとびな）のような似合いの一対だ。この日の花嫁御寮の初々しい美しさは後々まで角倉家に伝えられることになった。