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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星
「で、あんたはわざわざ、その苦情とやらを俺に言いに来たの?」
「まあ、それだけではないんですけどね。私、昨日から、こちらの裏店に引っ越してきた小紅と申します。これはほんのご挨拶代わりに」
 小紅は手にした十数本めの手ぬぐいを男に差し出した。今はこの引っ越しの挨拶を配りながら、長屋の住人たちの住まいを回っている最中なのである。挨拶して回るのもここが最後だ。
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