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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星
 小紅は小さく頷いた。
「家を出たのも、実はそのことと関係あるのよね。その男の形見らしいものっていえば、この綿入れくらいしかなくて」
「そうなのか」
 栄佐は面白くもない話を聞いたとでも言いたげに仏頂面で頷いた。
 それにしても綺麗な顔だ。小紅は栄佐の整いすぎるほど整った面に今更ながらに見蕩れた。江戸中を探したって、これほどの上男はいないだろう。歌舞伎役者に引けを取らないどころか、その上を行くのではないだろうか。
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