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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星
「あ!」
 真ん前で大声を出されたものだから、栄佐は一瞬、引いた。
「何だよ、急に馬鹿でかい声を出すな」
 しかし、栄佐の声は小紅にはもう届いてはいない。
「思い出したわ」
 難波屋で暮らしていた頃、お付き女中のお琴が後生大切に持ち歩いていた浮世絵、あれが板東碧天だった。
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