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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日
「―っ」
 小紅は身を強ばらせた。
「どうだ、あの男とさんざんやりまくって、愉しませて貰ってるのか?」
 耳許を掠めた声に、身体中の肌が粟立つ。ふいに耳朶を生温かなものでねっとりと舐められ、嫌悪感に叫び出しそうになった。
「準平さん―」
 小紅は震えながら呼ぶ。
「お前のような薄汚い売女(ばいた)に名を呼ばれただけで、汚れちまうような気がするぜ」
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