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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日
「危ねえところだったな」
 栄佐は刀を鞘に納めると、何事もなかったかのように淡々と言った。
「綺麗な顔に傷がついちまった」
 男にしては長くすんなりとした指先が小紅の頬をなぞる。
「まあ、この程度では跡までは残らないだろうが。もし、お前を少しでも傷つけていたら、俺はあいつを殺していただろう」
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