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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
「人間なんてものは勝手なものさ。自分が見ようとしたものしか見ないし、信じようとしたものしか信じない。お前を見るヤツがお前を板東碧天だと信じ込んでれば、お前は俺なのさ。マ、俺の仲閒は妙に思うヤツもいるかもしれねえが、そこは皆、同じ釜の飯を食う者同士だ。滅多なことでは何も言いやしねえよ」
 栄佐が早口で言った。
「とにかく着替えろ。俺はあっちに向いてるから」
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