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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
「この先が舞台袖になる。遅れた理由は言わなくて良い。うっかり声を出したら、女とバレちまうからな。何を訊かれても、頭を下げて切り抜けろ。俺の出番は花魁道中だけだから、それが終われば、お前は控え室に戻って、さっさと着替えて、部屋の前で待っててくれ。何か言われたら、碧天の許婚者だとでも言えば良い」
 行けと背中を軽く押され、小紅はよろめくようにして歩き出した。しばらく背中に栄佐の心配そうな視線を感じた。
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