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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
 芝居小屋を出て、二人はしばらく黙って歩いた。
「どうやら師匠はお前と俺の入れ替わりには気づいてなすったようだな」
 沈黙を破ったのは栄佐の方であった。
「やっぱり、栄佐さんもそう思う?」
 小紅も実は今、ずっとそのことを考えていたのだった。
「大丈夫かしら、男しか上がれない神聖な舞台に女の私が上がったりして。梅光さんが怒って、栄佐さんを破門にしたりしたら、どうしよう」
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