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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第11章 第一部第三話【月戀桜~つきこいざくら~】 疑惑
 おしかは小さく肩を竦めると、ぐずり出した赤ン坊に乳をやるために長屋に戻っていった。
 小紅は苦笑しておしかを見送る。今度は視線を栄佐の住まいに転ずると、表には相変わらず
―とうざのあいだ、ちりょう、おやすみいたします。                                  えい
 と書いた張り紙が二月の寒風に揺れていた。
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