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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第11章 第一部第三話【月戀桜~つきこいざくら~】 疑惑
 宇之助の後を追ったのは、何もはっきりと意図したわけではなかった。ただ、身体が自然に動いていたのだ。いつも頭で考えるよりも先に行動してしまい、結局はのっぴきならない状況に陥るのは毎度のことなのに、懲りもしない性分である。
 宇之助は小紅の追跡など知らぬげに、平然と先を歩いていく。普段からなのか、急いでいるのかは判らないが、かなりの早足である。幾つか町人町の目抜き通りを抜け、宇之助は和泉橋に差し掛かった。
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