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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第11章 第一部第三話【月戀桜~つきこいざくら~】 疑惑
 松平さまのお屋敷の回りにはこの辺りのどのお屋敷もがそうであるように築地塀がぐると張り巡らされていた。その築地塀に沿って細道が延びており、宇之助はそこをどんどん歩いていく。
 いかほど歩いたであろうか、現実には短いものであったのだろうが、小紅には永遠に続くように思われたその最中、宇之助が唐突に立ち止まった。
 小紅もつられるようにして歩みを止める。あろうことか、宇之助は更にさっと背後を振り向いた。
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