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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
「いつまで寝るつもり? もうお天道さまはとっくに頭の上よ。こんな時間に良い大の男が布団なんて引っ被って寝てたら、罰(ばち)が当たるわよ?」
「―何だよ、煩せぇな」
 案の定、やはり栄佐は起きていた。眩しいのか、手のひらで眼を覆っている。
「だから、朝ご飯!」
 大きな声で叫ぶと、栄佐がむっくりと長身の身体を起こした。
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