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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
 朱塗りの衣桁や姫鏡台、紅絹(もみ)の布団や派手でけばけばしい丁度が狭い室内に無造作に置かれ、昼なお薄暗い部屋が淫猥な雰囲気を醸し出している。
 昨夜は栄佐もこんな場所で初めて客を取る女を抱いたのかと考えただけで、涙が出そうになった。
 四半刻ほど過ぎた頃、階段を上る足音が聞こえてきた。
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