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どこまでも玩具
第11章 立たされた境地

 好き?

 好きってなんだ。

 俺が類沢を?

 憎んでいたヤツを好きになったりなんてするのか。

 どこからが好きだ。

 好きってなんだ。

 「……嘘だろ」
 アカが手を離す。
 俺は何も言っていないのに。
 フラリと体をおこして。
 「圭吾」
 乾いた声で続ける。
 「いつからだ」
 「……あ?」
 「いつからこうなった」
 「なにがだよ」
 金原が頭を掻く。
 その音がやけに響く。
 「状況」
 片言のように言った。
 「圭吾は知ってた素振りじゃない? みぃずきの変化にさ」
 金原が黙る。
 え?
 端から見てもそうなのか。
 俺、変だった?
 二人の間に板挟み。
 「止めなかったワケ……?」
 「オレがどうこう言う問題じゃねぇし」
 信じらんない。
 アカは小さく呟いた。
 「狂ってる……二人とも狂ってるよ絶対。おれは父さんにヤられた時、死にたい位世界が嫌になった。どうやったらそんな相手を好きになんか」
 「こっから先は!」
 圭吾が怒鳴る。
 シンと静まり返った部室。
 「……瑞希の問題だろ」
 俺は息を吸うしか出来なかった。

 俺の問題。

 裁判も。
 西雅樹も。
 類沢先生も。
 頭が痛い。
 「……勝手にしなよ」
 アカが乱暴に扉を開けて出て行く。
 その後ろ姿には、虚しさが混じっていた。
 裏切られたような。
 ここで、アカに助けを求めた。
 たった一カ月前に。
 ここで、類沢が好きだという有紗の告白を聞いた。
 ふざけんなって思った。
 一カ月。
 そんなに長いか。
 「瑞希……」
 「金原、俺おかしいのかな」
 こんなの聞いても仕方ないのに。
 「おかしいよ」
 「え」
 「少なくとも、オレには理解できねー。アイツは今でも近づくだけでゾッとするからな……でも、まぁ」
 金原はアカが出て行った扉を眺める。
 「瑞希のことを真剣に考えてくれているから、いいんじゃねぇの」
 瞬きをする。
 金原はカッと赤くなって、ブンブン手を振った。
 「ちがうっ、今のナシ。ナシだ! ただ、あれなんだ。あの日……オレが瑞希の家に泊まった日、ちゃんと約束通り手を出さなかったことを少し感心してるっつーか」
 「ありがと。金原」
 「礼言われる筋合いねーし」
 しばらくの沈黙。
 「相談にはいつでも乗るからな」
 「うん」
 「アカもな」
 「わかってる」
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