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どこまでも玩具
第13章 どこまでも
翌日、集会だけの始業日がやってきた。
講堂で話を聞きながら、教師達の好奇心の目を耐える。
校長にだけ事情は話した。
私情の込み入った理由として、公表はしないと決めたのだ。
朝から何人もの教師が尋ねて来たが曖昧にはぐらかした。
「類沢センセ?」
放課後、勿論のことだが、あの二人がやってきた。
意外にも仁野有紗の姿はない。
「みぃずきに何があったのか一から教えてくれますかね?」
「冬休み中連絡つかねーし、家にもいねーし。あんたの家は知らねーし」
「僕の家にはいない」
紅乃木が目を細めて、ポケットに手を入れる。
「じゃあ、どこにいるんですか」
「アカ」
「大丈夫。もう刃物は持ち込まないから」
他ならいいのか。
類沢は椅子にもたれる。
ここは保健室。
帰り支度を済ませた時、ちょうど二人がノックしてきたのだ。
「ていうかさ……センセはみぃずきを何だと思ってんですか」
紅乃木が短くなった髪をワシワシとかき乱しながら問う。
「遊びだったらこれ以上近づくのやめてくれません?」
「それ、どういう意味?」
「みぃずき、多分本気ですから」
「おいっ、アカ!」
金原が肩を掴んだ手を逆に捻る。
「圭吾だってわかってんじゃん。今更否定しないでよ」
「だからって」
「センセ?」
類沢は二人を見ていなかった。
宙に止まった視線が、動くことはない。
遊び?
本気?
それで何か変わるの?
「答えは……」
金原が身を乗り出す。
「瑞希にしか言えないかな」
「え?」
「ナニソレ」
「さあね。本人が目覚めたら訊いてみなよ」
立ち上がって、鞄を手にする。
ジャラッと中のものが転がる。
「目覚めたらって?」
「帰んなよ!」
扉の前で止まる。
「帰んないよ。一緒に来る?」
二人が身構える。
「どこに?」
「瑞希がいる所」
返事を聞かずに類沢は出て行った。
駐車場で車にもたれて空を眺めていると、遠くから二つの影が走って来るところだった。
エンジンをかける。
後部座席に無言で座る。
「どこに行くんですか」
発進と同時に紅乃木が言った。
ハンドルを切り、短く答える。
「病院」
車内は無言になった。