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第1章 現れた白衣

　ダン。
　ダン。
　拳でソファを何度も叩く。
　声など出なかった。
　パクパクと空気を求めて息を吸うだけだ。
　グチャグチャと音を立てて類沢が俺の腰を掴んでスライドさせる。
　そのたびに前立腺を擦り上げる鋭い快感に堪えねばならない。
　ダン…
　もう拳を上げる力はない。
　バチュ、バチュと気持ち悪いリズムに目を瞑る。
　余計に神経が研ぎ澄まされて全身が仰け反った。
　「ねぇ、我慢するのやめたら？」
　耳元で低い声が木霊する。
　ゆるゆると太腿を撫でたかと思えば、直ぐに蹂躙を再開する。
　「……あぅっ……は」
　「ああ、そっか。初めてだから痛いんだっけ？」
　涙が止まらない俺の頭をクシャクシャと乱す。
　「でもこれ体罰だからさ、ほら」
　落ち着いた態度の類沢は、この現状に余りに浮いていて、それが怖かった。
　「激しくしないと」
　「やっ……ぅそ…だろｯ」
　途端に打ち付けるように中をエグられる。
　呼吸が止まって、焦点がブレる。
　こいつ、殺す気かな。
　「――はぁああｯｯ、待っ…あっ」
　グチグチ。
　グラグラ揺れる視界に乱れたソファのシーツが広がっている。
　さっきから何度も果ててる自分の精液が膝元から広がってゆく。
　ヌチャ。
　何もかもが湿って汚れてる。
　「瑞希、可愛い」
　類沢が聞いたこともない優しい声で囁くと、熱いナニカが吐き出されて中を駆け巡った。
　「ふ……うぅｯ」
　もう涙で顔はビショビショで。
　情けないのに指一本上手く動かない。
　ズル。
　やっと解放された。
　俺は腰を崩して丸まった。
　もう嫌だ。
　嫌に決まってる。
　真っ暗な室内で自分の荒い息と、穴から零れる液の音しか聞こえないのも嫌だ。
　震えが止まらない体が嫌だ。
　また類沢が何かするんじゃないかと怯える心が嫌だ。
　「瑞希」
　呼ぶな。
　お前がしたことは許さない。
　許されない。
　言いふらして離任させてやる。

　カシャリ。

　「……え？」
　「大胆な一枚撮れたよ」
　携帯の画面を目の前に突きつけられる。
　濡れた自分が丸まって腰を突きだしてる。
　中途半端に脱がされたシャツに、ズボンが枷のように画面に映える。
　「これ引き伸ばして保健室に貼ろうか？」
　何言ってんの、この教師。
　片腕で室内を示す。
　「瑞希で飾って、来る奴を癒やしてあげよう」
　名案でしょ、と聞こえた。