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ひよこと野獣
第1章 野獣 武志の苦悩
「そんなんでよく告白しようと思ったな」

「だ、だって好きになっちゃったんですもん!こうやって告白でもしなきゃ先輩は私の存在さえ知らないうちに卒業しちゃうでしょ?」

瞳を潤ませながら首を傾げるひよこ。

こういう仕草ができるのは天然なのか?
それとも女の本能ってやつなのか?
こいつが処女じゃなければ布団の中に引きずり込んでいるところだ。

「けどセックスできないのは辛いな。浮気は我慢できんのか?」

「……か、体だけの関係なら」

「え、マジで?」

「や!もちろん嫌ですよ!?嫌ですけど!でも私……するの怖いし…」

まあしたことない奴ならそうだろうな。

「だから……体だけの関係だったら浮気だと思わないことにしようって決めてたんです!」

真剣な眼差し。
2歳しか変わらないとはいえ高校の先輩に告白するにはそれなりに勇気がいっただろう。
ひよこなりにいろいろ考えたのかもしれない。

「そこまでして俺と付き合いたいのか」

「……はい」

悪く思わないわけではなかった。
他の女とヤってもいいから付き合いたいなんて言われたことはないし、そこまで好きだと言われれば嬉しいに決まっている。

「じゃあ俺が卒業するまでにひよこにセックスする勇気が出なかったら別れる。それでいいか?」

「今が5月だから…約10ヶ月ってことですよね?」

「もちろん無理強いはしない。怖いって思う気持ちは誰でも最初はあるらしいしな」

「あ…ありがとうございます!う、上手くいくなんて思わなかった…」

床にぺたりと座り込んでひよこは瞳をさらに潤ませた。
こいつをベッドの上で泣かせたらどれだけ興奮するだろう。
いつの間にかそんなことを想像している自分に驚く。

もしかしたらしないまま終わるかもしれないのにな。

その想像は俺に軽くショックを与えた。
相手はひよこなのに。
全然色気なんてない子どもなのに。

それでもいつか別の男がもしかしたらひよこを抱くのかもしれないと思うと気分が悪くなった。

もしかしたら娘を持つ父親ってこんな感じなのか?

ついさっきまでベッドの上で泣くひよこを想像したのにも関わらず、俺はそんな的外れなことを思っていた。

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