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不条理な世界に、今日も私はため息をつく
第2章 コンビニはどこですか
 


 熱い。

 熱すぎる。


 なんだ……この熱さ。


 火だ、火がぼうぼうと燃えている。


 そしてあたしは、燃え盛る炎の中で、一本の大木に両手両足を縛られ吊り下げられていることに気づいた――。


 耳に聞こえるのは、嘲笑うかのような勝ち誇った奴の声。



「クルックゥ!」



 ああ、あたしは……。



「いやああああああ。

焼き鳥は好きだけど、焼き鳥になるのは嫌あああああ」



 食肉処理される寸前のコケコッコーの如く、けたたましくそう叫んで――


「!?」


 目を覚ました。



 まだばくばくする鼓動を抑えながら、きょろきょろとあたりを見渡せども、リアルだったあのぼうぼう炎は見当たらない。


"クルックゥ!"


 頭に蘇る、奴の声。それとも現在の舌打ちの声なのか。

 忌まわしのクルックゥ。


 ……ふと思った。


 なんで字面でしか見たことがないはずの"クルックゥ"が音声となり、しかも奴の声だとすぐにわかるのか。

 ……深いことは考えまい。


 あたしの、過去なかなか目覚めることがなかった邪眼が、今真実を逐一告げて疼いているからだ。


 多分。この感覚は鼻水が出たいからではない。


「これは……焼き鳥未遂を根に持つ奴の、クルックゥの呪いだわ。さすがのあたしも危ないところだった。あいつがこんな狭量のハトだったとは、油断していたわ」


 奴はこの世界に降臨できたのか。

 クルックゥ、なかなか侮り難し。


 額に滲む汗を手でぬぐい取り、夢という名の幻覚から幻聴にまで発展した、奴の呪い攻撃をかわせた安堵に、ほっと息をついた直後。



「なによここっ!?」


 再び雄叫び。控えめが好みらしい聡と付き合うようになってから、封印してきた騒音じみた大声を張り上げたあたしは、周りは熱いのに体は寒いという……異常な状態に陥った。


 砂漠だ。

 どう見ても、どう触っても、さらさらとした黄砂が拡がる砂漠だ。

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