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Deep Emotion
第9章 偽物の婚約者
「はーっ…」

「大丈夫ですか?」

私は門倉さんに麦茶を渡した。門倉さんが私を見る。

「…藤澤さん」

「はい」



「手当てだすから、俺の婚約者になってくれない?」



「ぶほっ」

陽くんが麦茶を噴き出した。

「こ…婚約者っ?」

何がどうなって婚約者?

これはプロポーズというやつなのか。

「あ、ごめん。言葉が足りなかったね。藤澤さんには、俺の婚約者の振りをしてほしいんだ」

いやいや、どっちにしたって意味がわからないんですが。

「…お見合いを組まれそうなんだけど、恋人や婚約者がいるならやめておくって、実家の母から…」

「は?兄貴、今の電話、母さんだったの?」

テーブルに飛び散った麦茶を拭き取りながら陽くんが訊いた。

「そう。あ、陽に伝言。俺もだけど、たまには帰ってこいだって」

「えー…、考えとく。で、見合い回避の為に澪に婚約者の振りさせるわけ?」

陽くんが不機嫌そうに言った。

「この通り!」

門倉さんが手を合わせて懇願した。

「土曜日に母に会ってくれるだけでいいんだ」


無理、絶対無理。


私は何とか断ろうとして、名案を思いついた。
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