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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第14章 確かな愛
通された部屋の奥には、マットの上でうつぶせで寝ているユニフォームを着ている男性がいる。その近くには沢山の保険医や副監督達の姿があった。
そしてー・・・
前夜祭のパーティーで挨拶をしていた、現サッカー協会の会長の姿も見える。
私は、ゆっくりと、だけど確実にその男性の元へ近付いていった。
「なんだ!?君は!?」
「光ーー・・」
保険医さんの話には耳も傾けず、彼の名前を呼ぶ。
するとーー・・・
顔をあげてくれた。視線が熱いほどに交じり合う。
「小百合ー・・」
名前を呼んでくれたー・・
アンタとかお前じゃなくー・・私の名前を。
もう涙が止まらない。
彼の表情は、いたって普通で安心感がこみ上げてきた。
でも、涙は、安心感から来たものじゃない。
そこに“確かな愛”を確認できたからだ。
小走りで近寄り、彼の頬に手を当てる。
「なんで此処に居るんだよ」
「心配やったから」
「はは、明日までは“夫婦”だもんな。
最後の最後まで良い妻を演じてくれるのか。」
「馬鹿っー・・これからもずっと夫婦」
少し充血している瞳が大きく開く。
負けたのは誰かから聞いたのだろう。
いやっー・・自分が退場となった時に、それを予想したのかもしれない。
だけど、私の気持ちの予想は当たってなかったのね。
見事にハズレー・・・。
「ハンソンのコメント聞いた?」
「あ、あぁ。」
「もう私も彼も、貴方も後戻りできないの。
自己責任っていう言葉の意味を理解するときだわ。」
「・・・・。」
「彼が、どんな手を使って
お腹の子や私自身を取り返そうとするのかは分からない」
「し、彼の気持ちも痛いほどに理解できるの。」
「だけどね、私はもう成人してるのよ?
自分の人生は自分で決める。」
「ハンソンの気持ちも柳沢の気持ちも
何1つ、私のこの考えに影響していない。
ただ理解できるっていうだけ」
「だからこそ、今から言う
私の気持ちは、自分で考えた結論という事を貴方には分かってほしいの」