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とあるオクサマのニチジョウ
第15章 Scene.05
「………嫌な予感がするっ」
ガバッと起きて布団を跳ね退ける真希。
まだ就寝して数時間しか経過していないにも拘わらず、長い黒髪はあちこち飛び跳ねていた。
「よく分からないけど、何かダメっ」
妙な胸騒ぎだけで突き進む真希。
いつも抜け出すのと同じ要領で、一階にある自室の窓に小柄な体を潜らせる。
何度も抜け出しているだけに、既に窓の外にはスニーカーまで用意してあった。
「取り敢えず行ってみよー」
寝起きにも拘わらず、両腕を上げて意気込む妙なテンションの高さを見せる。
躊躇う事無く敷地を出て、深夜の閑静な住宅街をタッタッタと走る真希。
擦れ違う人影など皆無に等しい街中を、軽快に進む真希はデフォルメされたクマが描かれたパジャマにスニーカーという姿であった。
走る度に、バインバインと弾む胸の衝撃でボタンが弾き飛びそうになる。
しかし、それすらも気にしない素振りで、真希は自身の胸騒ぎが杞憂で終わる事を願って脚を進めるのだった。
「ホッ…ホッ……きっと…大丈夫だよねっ」
軽く息を切らしながら走り続ける。
「絶対…大丈夫なん………あれ?」
しかし、闇雲に走り出した結果、ただでさえ方向音痴である真希は、雰囲気の変わった深夜の住宅街の様相に、いつも通りに道程を見失うのだった。